皮膚がんセンター

皮膚がんセンター

特色

富田林病院皮膚科では、2005年11月から月1回の皮膚がん検診などを通じて、特に皮膚がんの診断・治療を重点的に行ってまいりました。
大和川以南の南河内・和泉地域を始め、近隣の市町村の患者さんのニーズに応え、最新の技術で皮膚がんの撲滅に全力を注ぐ所存でございますので何卒よろしくお願い申し上げます。

診療内容

皮膚がんの診断

皮膚がんは、皮膚の表面に病変がありますので、肉眼的所見のみで診断のつくものもあります。
しかし、肉眼的所見だけでは、はっきりしない時には、まず、ダーモスコピー検査をします。これは、皮膚の病変を大きく拡大して観察できるだけでなく、皮膚の中まで透視して見ることができます。
それでも診断が困難な場合は、病変の一部を摘出して病理検査(顕微鏡検査)を行います。

皮膚がんの治療

皮膚がんの治療の基本は、手術です。
手術によって、皮膚がんの細胞を完全に摘出することで、皮膚がんが根治したことになります。
当科では、毎年50例以上の皮膚がん手術の経験があります。ただし、がん細胞が広範囲に散らばっているような場合には、抗がん剤を併用することもあります。
このような場合には、超音波撮影、CTやMRIといった最新の画像処理装置ががんの広がりを調べるために有用となります。
また、入院できない患者さんには外来化学療法室も完備しており、通院での抗がん剤治療も行っています。

受診にあたって

通常外来にお越しください。
また、無料の皮膚がん検診も毎月第3水曜日に予約制(地域連携室)で行なっております。

スタッフ紹介

中川浩一
中川 浩一(なかがわ こういち)

富田林病院皮膚科では、2005年11月から月1回の皮膚がん検診などを通じて、特に皮膚がんの診断・治療を重点的に行ってまいりました。
大和川以南の南河内・和泉地域を始め、近隣の市町村の患者さんのニーズに応え、最新の技術で皮膚がんの撲滅に全力を注ぐ所存でございますので何卒よろしくお願い申し上げます。

専門領域
皮膚科/皮膚外科
専門医・認定医
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医
所属学会・資格等
日本皮膚科学会(代議員)
日本皮膚外科学会(副理事長)
日本褥瘡学会(評議員)
日本皮膚悪性腫瘍学会
日本皮膚病理組織学会
日本臨床皮膚科医会
兼 皮膚科部長
塚本吉胤
塚本 吉胤(つかもと よしたね)
専門領域
外科病理
専門医・認定医
日本病理学会病理専門医指導医
日本臨床細胞学会細胞診指導医
日本内科学会認定内科医
日本医師会認定産業医
多田 都子(がん性疼痛看護認定看護師)
渡邊 利栄(がん薬物療法認定薬剤師)
吉松 利通(メディカルソーシャルワーカー)

外来担当医表

時間帯
午前中川中川
德田
德田中川
德田
中川交代制(予約)
午後
(予約制)
*手術日*手術日

皮膚がんについて

皮膚がんとは

皮膚がんは言うまでもなく皮膚表面の病気です。
医師以外でもその病変の存在には気付くことができます。皮膚がんを疑うかどうかがポイントになります。皮膚がんは意外に痛みや痒みがないことがしばしばあります。何か異常に気づいたらまずはかかりつけ医に相談してみてください。

どの“がん”でも言えることですが、早期発見・早期治療に勝るものはありません。これは治癒の可能性を高めるだけでなく、治療の負担、治療の痛み、治療の期間、治療の費用を減らすことにつながります。

特に富田林病院皮膚科は皮膚がん検診という活動も行っています。何か、皮膚の異常を発見されたら皮膚がん検診に申し込んでください。詳細は「皮膚がん検診」のページをご覧ください。

皮膚がんというと、皆さんは1種類の病気のように思ってらっしゃるかもしれません。実は、皮膚がんにはいくつかの種類があります。種類によっては、放置すれば、急激に進行して命にかかわるようなものもありますが、年単位でゆっくり進行するようなものもあります。また、進行はするけれども、体の他の部位に転移することが少ないものもあります。それぞれのがんの特徴を理解して、たとえがんになったとしても、必要以上に怖がる必要はありません。それぞれの特徴については「皮膚がんの特徴」にてご紹介しています

悪性黒色腫(あくせいこくしょくしゅ)

悪性黒色腫は、皮膚がんの中でも最も悪性度の高いがんです。メラノーマという名称で呼ばれています。
身体のどこにでもできますが、日本人の場合は特に足の裏に多いのが特徴です。
しかし、手足の爪の下や爪のまわりにできることもしばしばあります。
日本人の場合、悪性黒色腫は人口10万人あたり、年間1~2人ずつ発生すると言われています。
したがって、日本全体では毎年、1,000~2,000人の新規発生があるということになります。
この割合でいくと、富田林市(人口:約11万人)では年に1~2人は発生するということになります。

上肢の悪性黒色腫 辺縁が不整です

爪甲下の悪性黒色腫 爪が破壊されています

足底の悪性黒色腫 進行例です

こんな小さい場合もあります

手術により取り除く

悪性黒色腫の治療は、手術です。
病変部にある悪性黒色腫細胞を完全に取り除ければ、治癒したと考えられるわけです。
最近は医学的知識が広く普及しており、たいていの患者さんは病期(病気の進行度)が低い段階で受診されるので、初回の手術で治る方の方が多いと思います。

免疫力を高めましょう!

ただ、残念なことに、最近の研究によれば、悪性黒色腫は病気の初期に他臓器に転移している可能性があると言われています。
したがって、手術で原発巣を完全に取り除いていたにも関わらず何年かの後に、患者さんの免疫力が低下した時に再発してくるケースもあります。
したがって、術後も定期的に検査をおこなってフォローアップする必要もありますし、患者さん自体も免疫力を高めるような食事や運動が重要と言えます。

新食品成分表編集委員会,『新食品成分表2002』,一橋出版,2002.

精白米はお米から胚芽や外皮を取り除いたものです(左図)。玄米めしと精白米めしの栄養価を比較したのが右の図です。真中の茶色く、くしゃくしゃとした部分が精白米の各種栄養素の量です。ミネラルやビタミン類が玄米の10分の1以下になっています。ただ、急に精白米から玄米に切り替えるのはむつかしいので、米びつの中のお米に2-3割の玄米を加えることで始めましょう。

悪性黒色腫にありがちな特徴

皆様方が悪性黒色腫の診断をすることは難しいですが、ある程度、判断できるのが下の表です。悪性黒色腫にありがちな特徴をA~Eで示しています。これらの中で3個から4個くらいあてはまると悪性黒色腫の可能性が高くなります。是非、皮膚がん検診に来てください。

A   Asymmetry 上下左右が非対称
B   Border 境界が不規則
C   Color 色がまだら
D   Diameter 直径が6ミリ以上
E   Elevation 盛り上がっている

左右はどっちかと言えば対称かもしれませんが、右の方は染み出しがあり、矢印のところは赤くなっています(色がまだら)。大きさは4cmほどあり、明らかに盛り上がっています。

有棘細胞癌(ゆうきょくさいぼうがん)

他の診療科では扁平上皮癌と呼ばれていますが、皮膚科では昔から有棘細胞癌という名称が用いられています。悪性黒色腫に次いで悪性度の高いがんですが、死亡率などははるかに低いと思います。当科においても、過去15年間にわたってこの有棘細胞癌で亡くなった患者さんはお一人だけです。

顔面や四肢に多い

体中のどこにでもできますが、特に紫外線によく当たる顔面や外傷を受けやすい四肢に多いようです。たいていは1cm前後の肉色の塊といった病状を呈します。ただ、まれに、よくここまでと思うほど大きくなってから来られる方もいらっしゃいますので、早期に受診することで、治療も簡単になり、患者さんの負担も小さくなります。
このがんも手術が第一選択の治療になります。がん細胞の塊を完全に取り除いてしまえば、治療は完結します。ただ、残念なことに、そのような治療を行っても、リンパ節や他の臓器に転移してしまうこともまれにあります。

左顎部の有棘細胞癌

膝の有棘細胞癌

左上眼瞼の有棘細胞癌

右耳の有棘細胞癌

基底細胞癌(きていさいぼうがん)

悪性黒色腫や有棘細胞癌に比べると非常に頻度の高い癌です。特に顔面に多く発生します。つまり、紫外線が癌発生の大きな要因になっています。臨床像はたいてい“黒いかたまり”と呼ばれるような形で、表面には蝋様光沢を有することが特徴的です。顔面が好発部位なので発見されやすく、小さな病変で受診される方がほとんどです。この癌は、他の臓器に転移することはほとんどなく、命にかかわるということはありません。ただ、局所破壊性に奥へ奥へと入っていくタイプがあり、例えば鼻翼に発生した場合は鼻の穴が3つになってしまった症例を経験したことがあります。鼻周辺や眼の周辺にできたと時は要注意ということです。

左内眼角部の基底細胞癌

右ほっぺたの基底細胞癌

ダーモスコピーで見ると毛細血管の拡張が多数

ダーモスコピーによる診断

この癌の診断には特にダーモスコピーが有用です。ダーモスコピーは2000年頃から本邦でも広く使われだした皮膚科医必携の診療器具です。この器具は、皮膚の表面の色調だけでなく、皮膚の中にある、メラニン色素なども観察することが可能なのです。つまり、スーパーマンのように透視ができるのです。

上の症例は右のほっぺたの基底細胞癌ですが、臨床写真(左)ではかさぶたしか見えません。しかし、ダーモスコピーで見ると多数の毛細血管拡張が観察され(右)、基底細胞癌の診断の根拠の1つになります。

最新式のダーモカメラ

(ダーモスコピーとカメラが一体化している)

左下眼瞼の基底細胞癌

表在型の基底細胞癌

日光角化症(にっこうかっかしょう)

日光角化症は、その名の示す通り、長期にわたる紫外線暴露が原因となります。顔面や手背など日光に暴露されやすい場所に赤くてざらざらした臨床像を呈します。長年、農業や漁業に携わっていた方は要注意です。病変は表皮内癌といって、皮膚の最も浅い部位のみにがん細胞があるので、この段階で転移したりすることはありません。ただ、何もしないで放置してると、徐々に進行して先に書いた有棘細胞癌に進展し、それでも放置していると他臓器に転移してとりかえしのつかないことにもなります。

左こめかみの日光角化症

右こめかみの日光角化症

右耳の日光角化症

鼻の日光角化症

ベセルナクリーム

日光角化症の治療は、他のがん腫と同様に手術治療が基本でした。ところが、2007年にベセルナクリームと言う抗がん剤の塗り薬が発売になりました。

このお薬は1日1回、就寝前に週3回塗ります(月・水・金 あるいは 火・木・土)。
4週間塗ることで日光角化症が治ってしまう症例もあります。また、4週間の休薬期間の後、さらにもう4週間塗ることで治る場合もあります。
ただ、病変の厚みや表面の角質増殖の程度によっては効果が弱い場合もあり、有効率は60~70%と推定されています。

長所と短所

手術治療と外用治療の長所・短所は下の表に示す通りですが、多発例や手術が怖い患者さんには外用治療が適するかもしれません。その他、液体窒素による凍結療法もありますので、よく主治医の先生と相談するのがベストです。

 手術治療ベセルナクリーム
方法病変を切除し、場合によっては皮膚の移植を行います。週に3回、就寝前にクリームを塗ります。
治療後傷跡は残ります。炎症後の色素沈着を残す場合があります。
外来・入院場合によっては入院が必要。自宅で塗ってもらいます。
確実性ほぼ確実に治ります。有効率は60~70%。
治療期間1~2週間1~3か月

皮膚がんの診断方法

皮膚がんの診断は、まず、視診と触診です。
経験に照らして、多くのがんは視診だけで診断がつきます。もちろん、がんかどうかがわからないこともあります。
そんな時は、先に紹介したダーモスコピーが非常に有用です。その他、エコー検査やCT、MRIなども駆使して診断にいたることがあります。しかし、最も重要な検査は病理検査です。病変の一部を切り取って(小豆粒くらいです)、顕微鏡で観察します。 顕微鏡では、病変の元となってる細胞の形態や、その集合様式までもがわかります。どうしても小さな傷が残ってしまいますが、こうすることで正しい診断に至ることが多いです。

皮膚がんの診断

トレパンと言う器具です。
麻酔をした後、円形に病変をくり抜きます。
摘出したサンプルを病理検査に提出します。
顕微鏡で観察します。